リーダーシップに関する本は、世の中に数多く発行されています。
数々の関連本を読み漁りつつ、5カ国に7年以上海外で働きグローバルな環境で多くのリーダーを見て、自分自身も小規模ながらチームを引っ張ってきました。
この記事では、本などから得られる体系的な知識とは一線を画し、自身の経験から学んだグルーバルリーダーの素養6つをまとめたものです。
僕自身、組織のリーダー(管理職)の経験を積みつつ、世界トップランクのビジネススクールのEMBA(Executive MBA)を取得し、実践と知識の両方を有しています。
・マネジメントとリーダーシップの違い
・グローバルリーダーの素養6つ
・グローバルリーダーの事
【徹底解説】事例から見えるグローバルリーダーの資質6つ
グローバル人材とは
グローバル人材の定義ですが、いくつか存在する中で、明快で分かりやすく僕がしっくりくるものを紹介します。
「グローバル人材」とは、日本人としてのアイデンティティや 日本の文化に対する深い理解を前提として、ⅰ)豊かな語学力・コミュニケーション能力、ⅱ)主体性・積極性、ⅲ)異文化理解の精神等を身に付けて様々な分野で活躍できる人材のこと。
出典:総務省「グローバル人材育成の推進に関する政策評価書」
総務省の定義加え、他で紹介されているものを付け加えると、以下の5つになります。
・語学力
・コミュニケーション能力
・主体性、積極性とチャレンジ精神
・異文化理解力(自国への文化の理解も含む)
・柔軟性と好奇心
他にも、文科省や人材育成推進会議の定めるグローバル人材の定義があるので、参考までにリンクを置いておきますね。
\グローバル人材について詳しく知りたい方はこちら/
https://masa-learn.com/global-talent-skills-benefits/
マネジメントとリーダーシップの違いは?
マネジメントとリーダーシップ、混同して使われがちな事の言葉ですが、実際の所全く異なるものです。
マネジメント
経営や管理のことで、管理職が部下を管理したり自部門の業務を管理したりすることリーダーシップ
指導力や統率力と直訳されますが、一般的には組織の中で目標を定め、組織を維持しながら成果を出す能力のこと
一般的に日本人はマネジメントが非常に得意で、部下の仕事の質や労務管理は世界でも類を見ないほどキチンと出来ます。
一方でVUCA*の時代では、環境が大きく変わる中で、ビジョンや目標を立て、組織を引っ張ってそれらを達成するような強いリーダーシップ増々求められるようになっています。
以下、リーダーシップとマネジメントの違いを詳しく解説している記事ですので、ご興味があればご覧ください。
参考:リーダーシップとマネジメントはなにが違う?混同されがちな両者の概念を解説
多くのグローバルリーダーと働き気付いた。彼らには共通点がある
僕は今まで、中東・アフリカ・北米を含む5 か国に7年以上海外で勤務し、スペインのIEビジネススクールでExecutive MBAを取得しました。
特に新興国での海外勤務では、小規模会社へのアサインメントであるため、社長や役員と密にコミュニケーションを取りながら仕事をするケースが大半でした。
僕が接してきたリーダーのいくつかの例で、本記事で取り上げる方々です。
・@UAE:日本人社長
・@サウジアラビア:インド人社長
・@アメリカ:南米人マーケティングダイレクター
・@南アフリカ:南アフリカ人ダイレクター x 2
特に直近の南アフリカ駐在期間は激動で、着任時に業績好調であった状況とは打って変わり、3年後の帰国時には大リストラを敢行するほど追い詰められていました。
そういう状態へ追い込んだリーダーシップや、その後に立て直しを図るリーダーシップ。
それらを構成する資質を、MBAで学んだ座学に加えて、自分が経験見て来た通りにまとめました。
それでは見ていきましょう。
グローバルリーダーの資質6つとは?
先ずはグローバルリーダーの資質6つです。
① 高いEQ
② 視座の高いビジョンと誰でも分かる戦略
③ コミュニケーション能力(含:語学力)
④ 際立つ専門性とジェネラリスト資質
⑤ Delegation: 部下に任せる胆力
⑥ 意思決定ができる
1つずつ具体例と共に解説しますね。
①高いEQ
1つ目はEQです。
EQとはEmotional Intelligence Quotientの事で、心の知能指数の事を指します。
EQが高い人は自身の感情を認識しコントロールし行動に繋げていく事で、ビジネスシーンなどで良好な人間関係を築くことが出来ます。
リーダーには信用獲得が不可欠ですが、信用には2種類あります。
1つは、資質3番目に解説する「際立つ専門性に基づく信用」で、いわゆるその分野でとても仕事が出来るというものです。
2つ目が、「人間として信用が出来る」こと、つまりその人の誠実性や相手を思いやるリスペクトの心などがこれに当たります。
EQは、この2つ目の「人として信用できる」ことです。
【事例①】
南アフリカで、「オープンドア・ポリシー」を敷いていたダイレクターAの例。
先ず多くの海外では、いち機能部署を率いるダイレクターと言うポジションに就くと個別の執務室が与えられることが多いです。
ダイレクターAは多忙にも関わらず、現場の動きを鈍らせないために、自身の意思決定が必要な事柄をいつでも誰でも相談できるようにしていました。
常に会議とメールが入ってくる状況で、隙間を縫って部下が相談に来たら正直言ってかなりキツイし、腹が立つことも多いでしょう。

僕自身も彼に気を遣いながらも、かなり沢山相談しに行きましたが、意思決定が早く助かった事例は枚挙に暇がありません。
こういった利他な精神性が相手に伝わり、この人のためなら頑張りたいと思わせてくれますね。
②視座の高いビジョンと誰でも分かる戦略
日本でも海外でも、会社が何を目指しているのか分からないと、従業員は自分自身で物事を判断することが出来ません。
例えば、ある自動車メーカーが「利益や売り上げよりもお客さまの満足度を最大限高め、QOL*を高めるお手伝いをする」と会社のビジョンとして掲げたとします。
*Quality of Life、生活の質の略
例えば自動車販売店のディーラーがお客さまを迎えたとき、今は買うタイミングではないと認識しておきながら、割引や在庫などを理由にその場で無理に買わせようとすることがあります。
これは、お客さまよりも今の売上が大切だからという考えの表れです。

僕が接してきたリーダーは、上のような分かり易く誰もが納得するビジョンを打ち出し、継続して従業員に発信し、理念を固めていました。
上の例では、従業員が理念をきちんと理解し「目の前のお客さまの満足度を高めQOLを高められる判断」、つまりいまお客さまに製品を売りつけないという判断を現場で出来るという事です。
更に言葉だけでなく従業員の目標設定もビジョンに沿ったものにして、行動の変革を促し、中長期での業績回復を実現していました。
【リーダーとして理念・ビジョンを築くには?】
このようなビジョンや実行力は、多くの人と理念と触れ合い、自分の哲学を築き上げていく事で産まれるものです。
そもそも「どのような会社にしたいか」という考えがないと、そもそもリーダーになっても何もできませんので考えてみましょう。
③コミュニケーション能力(含:語学力)
役職が高くなるほど、社内外問わずコミュニケーションを取る機会が非常に多くなり、会社の印象を左右するほどの影響力を持ちます。
そのため、特にオフィシャルな場では以下のポイントに気を付けましょう。
・ロジカルで現場に伝わるストーリーテリング
・自信を持った態度
・Choice of Words (言葉の選定)
・高い英語実践力
・一貫性のある発言、など
【事例②】
少し古いですが、日産自動車の2人の日本人の英語プレゼンテーションを比べてみてください。
トレーニングすればかような対外コミュニケーションも可能であるため、将来グローバルリーダーを目指す人は、今のうちから鍛えておきましょう。
\体験セッション、相談はこちら/
https://masa-learn.com/overseas-assignment-next-step/#toc10
追記ですが、多様な文化背景を持つ方々をリードしていくため、異文化理解の知識は必須です。
以下にまとめているので、興味がある方はご覧ください。
\異文化理解に関する記事はこちら/
https://masa-learn.com/intercultural-understanding-overview/
④際立つ専門性とジェネラリスト資質
ジェネラリスト資質は視野を広く持つために必要なのは自明ですが、ここではグローバルで特に求められる「専門性」について解説します。
資質①で解説した通り、リーダーである以上は際立つ専門性に裏付けされた信用がないと部下はついてきません。
ただ日系の大手企業のように、ジェネラリスト養成のため部署間異動で経験がない部署(生産管理⇒マーケティング)でも配属される可能性があります。
スタッフ層ならまだしも、リーダーシップを発揮しなければならない管理職以上の人にとってはかなり酷です。
特に経験が長い従業員が多い部署では専門性に裏打ちされた議論やアドバイスが出来ないと、「この人に相談しても時間の無駄だ」と思われ、チームがバラバラになってしまいます。
【事例③】
南アフリカのX社で25年営業として勤務していた営業ダイレクターBが弊社に転職。
入社当初は、人物や能力を測るような質問や議論を吹っかけていた営業部の人間が多くいましたが、過去の営業経験を基にした的確で革新的なアイディアをベースにアドバイスをしていました。
そこから彼は、「あの人は南アフリカの自動車市場、営業のやり方を知っている」と早々に信頼を得ていました。
⑤Delegation:部下に任せる胆力
これは例外がありません、グローバルリーダーに必須スキルです。
優秀なリーダーはDelegationができ、部下がキチンと仕事が出来るようになるまで、自分では手を動かさず本人に完遂させます。
ただこれは、グローバルリーダーに胆力があるというよりは、そもそも雇用に関する考え方の日本・海外での違いが根本にあると考えます。
海外では、募集したポジションの業務を遂行できる前提で雇っています。
※世界中全てではないが、多くの欧米、彼らに影響を受けた国々
その業務を遂行できないという事は、そのポジションに必要なケイパビリティが不足しており解雇の可能性すらあります。
そのためグローバルリーダーも「当然あなたの仕事ですよね」というスタンスで仕事を振るので、ある意味通常運用です。
「何かあったら管理職が責任を被って部下の仕事をする」という考え方が身に染みている多くの日本人は、見習わないといけない能力ですね。

これが理由で、多くのグローバルリーダーは優秀な部下を獲得するかに全精力を注いでいます。
⑥意思決定ができる
意思決定が出来る能力は、グローバルリーダーには必須です。
これは②の「視座の高いビジョンと誰でも分かる戦略」で解説したポイントと似ていますが、自分自身の哲学に基づいた視座の高いビジョンがあれば、本来意思決定が出来るはずです。
【事例④】
大手日系企業の海外支社の社長の事例です。
売上が小規模な会社であるため、グローバル戦略の重点市場からは外れてしまっており、十分な商品ラインアップが供給されないリスクがありました。
理念もなく上から言われたことを実行するだけの社長は、グローバル部門と戦うことなく、十分な商品ラインアップを揃えることが出来なかった。
意思決定をせず流れに任せた結果、数年かけて徐々に販売できる商品が減り、会社の規模を維持できなくなり事業は縮小、多くの従業員が仕事を失っていった。

もちろん、ビジョンを重視し過ぎて売上・利益を度外視してしまっては会社としても成り立ちません。
ビジョンと現実の整合を取りながら、中長期的な利益を確保していく事が、グローバルリーダーに求められる資質となります。
グローバルリーダーの鍛え方
① 高いEQ
② 視座の高いビジョンと誰でも分かる戦略
③ コミュニケーション能力(含:語学力)
④ 際立つ専門性とジェネラリスト資質
⑤ Delegation: 部下に任せる胆力
⑥ 意思決定ができる
解説した資質6つは、基本的に実践でしか身に付ける事が出来ません。
ですが、実践する前に自分なりの仮説を持ったうえで実践の場に身を置くことで、学びが更に深いものとなっていきます。

僕が、働きながらEMBAの学習をしていた理由がまさにこれです。
その方法は以下の通りです。
①グローバルリーダーの話を聴く
おススメしたいのは、日本人・外国人、企業規模の大小問わずなるべく多くのグローバルリーダーと話をすることです。
彼ら・彼女らがどのような理念を持っているのか、特に意識していることを積極的に聞いて、自分自身の理念を作って行ってください。
②グローバルリーダーの本を読む
加えて、過去・現在を問わずリーダーの理念を記した本を読むことも、非常に有効な手段です。
本は自分のペースで読めるため、非常に気軽にリーダーの考え方を学ぶことが出来る優秀な手段です。

個人的なおススメは、稲森和夫さん、松下幸之助さんの本です。
更に視野を広げたい場合は、読書会を開催・参加して当該本に関する議論を交わすと、自分に気付かなったポイントなどがハイライトされてとても有効です。
おススメの本を紹介しておきますね。
③講座、ワークショップ等に参加する
グローバルな環境を提供するビジネススクールで学ぶ、異文化理解などの講座やワークショップに参加するのも有効な手段の1つでしょう。
体系的にまとめられているので、考え方を学ぶだけでも意義があります。
まとめ:海外に飛び出したい日本人グローバルリーダーへ
自分自身が成し遂げたい理念がないと、グローバルリーダーになった時に、他人の心に火をつけてリードする事は到底できません。
ただ、本だけを読む、人の話を聴くだけでは成長は限定的で、とにかく実践からの学びが必要です。
なのでグローバルリーダーを目指す方は、考えるよりも先に、好奇心が赴くまま先ずは海外に出てみてください。
そこで見える世界は予想外に溢れていて、価値観を大きく変える事になり、その経験の1つ1つが理念を形成していくと信じています。
一緒に頑張りましょうね。
記事は以上です。