こんにちは!南アフリカの自動車マーケッター x 海外MBAホルダーのマサ (@mappyinME) です。
この記事は、「【新興国駐在体験談 vol.3】入社3年目で海外赴任したら地獄だった(サウジアラビア業務研修編)(リンク)」の続きです。
「メーカーの海外駐在ってどういう仕事をするんだろう?」
「ゴリゴリの日系企業に行くとどういう生活が待っているのかな・・・?」
このような疑問にお答えする記事となっています。
それでは見ていきましょう。
【新興国駐在体験談 vol.3】入社3年目で海外赴任したら地獄だった(サウジアラビア業務研修編)
UAEに渡航
エジプトでの語学研修(記事のバックナンバーはこちら)とサウジの業務研修(記事のバックナンバーはこちら)を終え、とうとうUAEでの駐在生活が始まります。
新しいチャレンジが大好きな僕は、胸の高鳴りを抑えられずにいました。
ここで1つ振り返りたいことがあります。
国際間移動と引越しの回数です。
実は僕、この4年半のアサインメントの中で「国際間移動が4回」、「引越しの回数が9回」を経験しています。
フライトに至っては、恐らく200回以上は乗っていると思います。
自分で言うのもなんですが、ここまでフレキシブルに飛び回れる人材って貴重だと思いますよ。笑
余談はここまでにして、住居の話です。
UAEに到着したタイミングで、副社長の帰任が決まっていました。
なんと、副社長が住んでいたアパートの契約期間が9カ月残っていたため、そのアパートを引き継ぐこととなりました。
海沿いの素晴らしい家で、窓から外を眺めるだけでストレスが軽減されたため、後に紹介する地獄を乗り切るのに、この癒しは欠かせませんでした。
↑家のベランダからの景色
住居もようやく落ち着いたところで、明日からとうとう仕事が始まります。
そして新しい仕事が始まる
新しいアサインメントの内容は・・
住居も落ち着いたところで、新しいアサインメントが始まります。
僕に新しく与えられた仕事は、Audio Visual(AV機器:テレビやオーディオ機器)の「BPA(Business Planning Administrator)」、要するにビジネス企画・統括というなんともカッコイイ響きの仕事でした。
早速オフィスに行くと、同じチームで働く2人を紹介してもらいました。
1人は実務をサポートしてくれるアシスタントのフィリピン人の女性、もう1人は商品企画のインド人の男性です。
寝袋を渡される
チームの紹介を終えたところで、今度はDirect Report(直属の上司)の部長に挨拶に行きます。
部長とは顔見知りではあったので、挨拶はそこそこに、「ちょっと待ってて」と急に何か思いついたように席に戻っていきました。
戻ってきた部長の手には、ドラえもんの秘密道具っぽいものが抱えられていました。
部長:
ビジネス企画・統轄の仕事は大変だからね!これはきっと役に立つはずだから、あげるよ。
え・・・?
せっかくサウジの地獄も乗り切ったのに、ここでもまた地獄あるの?
部長のひみつ道具ももらったところで、UAE統括会社の社長さんにもとへ挨拶へ行きます。
「社長のつもりで」~幅広い業務~
寝袋を席に置き、部長と共に社長へ着任の挨拶へ行きました。
すると挨拶もそこそこに、社長から明確なミッションが与えられました。
UAE統括会社の社長:
ビジネス企画・統轄の仕事は、一言で言うと「中小企業の社長」。まさは、自分のことを中近東・アフリカのAV事業を運営する会社の社長と思って、結果を出すように。
どこまでもモチベーションを上げるのが上手い社長。
「仕事の成果のご褒美は新しい仕事」と言われていますが、その通りです。
サウジのプロジェクト成功を評価してくれ、基幹の仕事を任せてくれるその心意気に必ず応えたい気持ちを強く持ちます。
メーカー駐在員の仕事は「購買・販売・在庫」マネジメント
AV事業のビジネス企画・統括のチームメイト、上司、そしてUAE統括会社の社長との挨拶を済ませたところで、早速実務が始まります。
具体的にはどういう業務を担当するのか、少し説明します。
「購買・販売・在庫」のマネジメントとは?
これは、実際に商品を扱うメーカーに多い業務です。
物理的な商品を抱えるということは、在庫が発生します。
在庫が発生すると、キャッシュフローが悪化し、商品の市場価格は落ち、そして保管代がかかります。
このような理由から、在庫をどのようにマネジメントしていくかがキモとなります。
・キャッシュフローが悪化する
・家電は陳腐化が早い⇒値引きが必要になる
・在庫はスペースを取る⇒保管の費用がかかる
・本社レポートが大変になる
これらのことから、多くのメーカーにとって「在庫マネジメント」は死活問題なのです。
月1回:社長へのビジネス企画提案
記述の通り、「在庫マネジメント」は会社にとって死活問題です。
そのため会社としての重要事項の決定であることから、売上と在庫の基となる商品を工場に発注するためには、月に1回社長の決裁が必要となります。
この「購買・販売・在庫」提案、これをビジネスプラニングと呼びますが、この提案を起案し社長に提案するのがビジネス企画・統括の僕の役割です。
最初の3~6ヶ月が地獄だった
「ビジネスプラン(購買・販売・在庫の計画)の提案」というと聞こえが良いですが、経験のないビジネスパーソンが起案するのは大変難しいものです。
理由は4つあります。
・AV(Audio Visual)の製品の数(グレード)が200+存在する
・国によって仕様が若干異なる(コンセントの形状、など)
・代理店の数が30~40存在する
・取引している工場が複数ある
30~40存在する代理店1つ1つと、200+存在するグレートの発注の組み合わせを決める必要があります。
決めても、日々変動するのでマネジメントがめちゃくちゃ大変です。
そのため、前月に提案したビジネスプランを深く理解していないと、何がどう変わったか分からないので、説明に窮します。
更に難しいところが、「いくつ工場へ発注するかは販売見込みの数による」、つまり販売数に依存しているためコントロールがかなり難しいということです。
セールスは合計10名ほどいるのですが、製品のキャンセルが日々発生し、そのたびに「ごめーん。てへぺろ」と言ってくれるならまだよく、人によっては勝手に共有フォルダのエクセルをいじって売り上げを落としているケースもあります。
この状況の中、1ヶ月目の僕が社長提案をする訳です。
初めての社長提案
「ビジネスプラン(購買・販売・在庫の計画)の提案」は、多くの不確定要素が存在するため、いわゆる経験による「勘所」がとても大事になります。
この「勘所」を持ち合わせていない1か月目の僕が、明日に社長提案をします。
するとこういうことになります。
夜23:00
社長への提案はエクセルシートで行います。
エクセルの隅から隅まで見て、式を1つずつ理解しながら、先ずは構成を理解します。
もう23:00だけど、構造は理解しました。
この時点で上司は帰宅。翌朝に確認しようということに。
朝2:00
先6ヶ月のビジネスプランを作成するのですが、素案は何とか完成しました。
ここで考えます。
とにかく、ひたすらに考えます。
朝4:00
まだ考えています。
当の本人は気づいていないのですが、「答えがない」ので、より多くのインプット、例えばセールスに聞くなりして、最後は自分で意思決定するしかないのです。
頭が働かないこと、素案は一応できているので、ここらで一度1時間くらい寝ることにします。
ここで大活躍、寝袋。部長、ありがとう。
シャワーにも入りたいですが、オフィスにない・・・
汚いですが、トイレにある手動ウォシュレットをシャワー代わりにします。(お目汚しすいません)
半分ネタでやりました。笑(まだ余裕あり)
ビジネスプラン提案の結果
会議室で寝袋にくるまって1時間ほど仮眠をしたところで、従業員が出社してきます。
部長が出社してきたところで、早速素案を見せ、いくつかインプットをもらって指示を仰ぎ、資料は何とか完成しました。
そして、社長への提案の時間。
もう心臓止まりそうなくらいドキドキです。
部長:
「それでは、毎月定例のビジネス企画会議を始めます。まずはAV事業、まさから提案します。」
「はい。まずは今月の売上と在庫見通しを・・・。そして来月以降は・・・・。以上です。」
ふぅ、終わった。
部長からのサポートもあり、多少の調整指示は頂きましたが、基本的には承認頂きました。
これで一安心。
昼食後、車で1時間ほど更に仮眠をして、業務に戻ります。
そして月末の販売追い込み
「ビジネスプランの提案」が承認されたら、今度は売上をしっかり上げないといけません。
月末の僕の仕事は、セールス1人ずつ売上の確認と追い込み、そして船の手配と船積書類の確保です。
中近東・アフリカでは、LC(Letter of Credit=信用状)取引が盛んです。
LCとは、お客さんが製品の代金を支払わずにいなくなっても、銀行が支払いを保証しますよーという債権ですね。
銀行からLC開設の連絡があって、初めて製品の出荷が認められます。
そのため、月末のコンテナと船の手配をして支払いを待つのですが、LC予定通りに来ないケースが70%です。
そのたびに1つずつ船をキャンセル、次の船を手配するという作業が発生するため、月末は「工場の輸出部隊」と船の調整、セールスと共にお客さんにLC開設の電話、キャンセルが出たら他のお客さんを探す「リアロケーション」で、ずっと電話しています。
このようにビジネス企画・統括は、事業をきちんと運営するために、身を粉にして働きます。
更に幅広い業務へ
「ビジネスプランの提案」と「月末の追い込み」は、大変な仕事でしたが3~6ヶ月ほどで慣れてきます。
すると今度は、幅広い業務に時間を使うことが出来ます。
例えば、こんな業務に力を注力することができます。
・売上を更に伸ばすためセールスと共に出張
・半期予算の策定のために東南アジアへ出張
・ラインアップ拡充のため、本社の商品企画と連携し候補の工場訪問
・本社への毎月の売上報告と今後の見込み
・新しいプロジェクトのアサイン(古い在庫の販売、など)
簡単な仕事ではありませんが、強いオーナーシップを持ち「自分でビジネスを動かしている」感覚があったため、とても充実した時間を過ごすことが出来ました。
会社の経営危機、そして転職へ
毎月の「ビジネスプランの提案」や「月末の追い込み」に加え、「幅広い企画業務」に慣れ始めたころ、会社全体の売上が不調で経営危機に陥りました。
Yahoo!ニュースでは連日ネガティブな報道、給与は大きくカットされ、会社の士気が落ちていました。
当時29歳だったのですが、この経営危機をきっかけに2つの事を真剣に考えるようになりました。
・20代のうちに、業界・職種を変えて新しい仕事にチャレンジしたい
・まだ身体が動くうちに、もう一度「野球」を本気でやりたい
野球についてはまたいつか記事で書きますが、この2つを実現するためには転職するしか手段がありません。
会社が経営危機であるため、希望の部署や仕事にたどり着けるかどうかわからないためです。
「着火したら動かずにいられない」僕は、日本に帰国すべく「転職活動」を開始するのだった・・・。
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【新興国駐在体験談 vol.5】入社3年目で海外赴任したら地獄だった(UAEから転職編)
次回は最終章、【新興国駐在体験談 vol.5】入社3年目で海外赴任したら地獄だった(転職活動編)をお送りします。
海外駐在の機会は絶対に掴んだ方が良い理由
4年半の海外研修、駐在を経て転職活動を開始した僕ですが、海外へ出て本当に良かったと強く感じています。
この記事には書いていないことも含みますが、海外駐在はメリットが5つあります。
・給与の大幅アップ
・マネジメント能力の向上機会
・転職に有利
・語学力の向上
・異文化理解力の獲得
記事を読んでいただいた方は、幅広い業務経験により、現場間や実務能力・知識が身に付くことは分かっていただけたかと思います。
詳しく知りたい方は、以下の記事を参考にしてください。
記事は以上です。